2008年11月8日土曜日

未来のカルテ 遺伝子診断は今 検査の是非

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遺伝子診断はいずれもっと盛んになりそうです。
新規社員を募集する時も将来生活習慣病になりやすいかがわかると
合否に影響する時代がくるかも知れません。

喫煙していると病気になりやすいし、仕事の効率も落ちるとして
採用しない企業もでてきているそうです。

私は遺伝子情報は、生活習慣で変わるといわれており、
よい生活習慣を実践していることもあり、知りたくないと思います。


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■体質調べ病気予防に利用 有効性の評価、これから

人間の持つすべての遺伝子情報「ヒトゲノム」の解析が進み、さまざまな病気が遺伝子レベルで解明されるようになった。遺伝子を調べることで病気の予防や治療に役立てる遺伝子診断は、画期的な医療として注目される一方で、普及に欠かせない遺伝カウンセラーの働く場がない問題も浮上している。将来的な病気や健康状態を予測する「未来のカルテ」ともいえる遺伝子診断をめぐる現状を探った。

≪ネットや郵便で≫

遺伝子診断は、血液や羊水から遺伝子を取り出して解析し、病気の診断や発病の予測に役立てる技術だ。臨床への応用は、先天異常や単一遺伝子の変異による遺伝病を中心に行われてきたが、がんや糖尿病のなりやすさや薬の副作用を予測する体質検査まで、広く行われるようになっている。

中でも最近よく見かけるのが、口中粘膜などを検査機関に送り体質を調べる検査だ。3つの遺伝子から肥満のなりやすさを調べるものが多く、標準と異なる遺伝子を持つ人を「りんご型」「洋なし型」「バナナ型」に分類、体質に合ったダイエット法を教えるなどというものだ。インターネットや郵便で申し込み、医療機関を通さないことから、「DTC(ダイレクト・トゥ・コンシューマー、消費者に直接提供)遺伝子検査」と呼ばれる。

≪商業ベースを疑問視≫

誰でも、どこに住んでいても簡単に遺伝子検査ができるのが特徴だが、日本人類遺伝学会(中村祐輔理事長)は10月、この検査について、「臨床遺伝専門医など十分な遺伝医学的知識のある専門家が関与すべきだ」などとする見解を出した。臨床遺伝専門医とは、同学会と日本遺伝カウンセリング学会の2機関が、共同で遺伝カウンセリングのトレーニングを行い認定した専門医。専門家としてはほかに、医師以外による遺伝カウンセラーなども指す。

肥満や生活習慣病などに関係する遺伝子が見つかっているとはいえ、これらの遺伝子を調べることが病気の予防や体質改善に役立つかどうかを科学的に示したデータは、実はまだない。現在、海外で検証が行われているところで、有用性の評価はこれからだ。

日本人類遺伝学会理事で信州大学医学部社会予防医学講座の福島義光教授(遺伝医学)は「有用性が科学的に証明されていない以上、これらの検査を商業ベースで行うのは詐欺と同じ」と手厳しい。ただ、法的規制はないため、検査サービスの提供を禁止することはできない。

≪生活改善の手立てに≫

遺伝子検査を人間ドックと同じように、病気の予防に役立てたいと考える医師も少なくない。

北青山Dクリニック(東京都渋谷区)では5年前から、がんやアルツハイマー、動脈硬化、肥満などの発症リスク(危険度)を評価する遺伝子検査を行っている。喫煙による肺がんリスク検査が4万2000円、アルツハイマー病リスク検査が2万6250円と決して安くはないが、これまでに100人弱が利用した。

阿保義久院長は「予防医療の一環として、遺伝子検査は既存の検査の質を高めるために行っている。リスク評価なので、リスクの高い人が必ずその病気になるわけではないが、病気予防のために、より効果的な生活習慣改善メニューなどを提案できる」と考える。

例えば、検査で喫煙による肺がんリスクが高いことが分かった人に、「あなたは遺伝子的に喫煙で肺がんになりやすいのだから、たばこをやめた方がいい」と説明することができれば、禁煙の強い動機付けになるのではないかというのだ。

≪学校や社会で教育を≫

遺伝子検査を肺がんのリスク評価に利用するという試みは一方で、リスクが低い人に禁煙をすすめることが難しくなる可能性もはらんでいる。

しかし、阿保院長は「人間ドックで異常がない人にも、より良い生活習慣をすすめるのと同じで、リスクが低くても肺がんになる可能性があることを検査前に十分説明し理解してもらっている。リスク評価の意味を分かった上で利用すれば、遺伝子検査で得られる情報は病気予防に役立つはず」と説明する。

福島教授は「日本では多くの人が遺伝や遺伝子について正しく理解していないのも問題」とし、「消費者が不利益を被らないためにも、学校や社会の場で適切な遺伝学教育を行うことが必要だ」と話している。

(出典:産経新聞)



◆未来のカルテ 遺伝子診断は今 遺伝カウンセラー

■養成急ピッチも 難しい就職

今年5月の医療保険の診療報酬改定で、医療機関が遺伝子検査を行ったときの遺伝カウンセリングの費用が初めて請求できるようになった。お茶の水女子大大学院遺伝カウンセリングコースの千代豪昭(ひであき)教授は「健康保険で遺伝カウンセリングの必要性が認められたのは画期的なこと。利用できる疾患はまだ少ないとはいえ、遺伝カウンセラー普及の足がかりになれば」と期待を寄せる。

遺伝カウンセラーは、遺伝病患者や家族に遺伝の正しい知識を伝え、治療法などを決断するための支えとなる役割を果たす。日本ではもともと、産婦人科医や小児科医など遺伝疾患を扱う機会の多い医師がカウンセラーも兼ねていたが、平成17年から医師以外の専門職として遺伝カウンセラーの認定制度がスタートした。今月2日に行われた4回目の試験の受験者を含めれば約70人を数える。

養成は、現在設置されているお茶の水女子大、京都大、近畿大などに来年4月設置の長崎医大を加えて9大学院の修士・博士課程で行われ、今後は毎年新たに70~100人の資格取得者を見込む。約20年前から養成が始まった米国ではすでに2000人以上が臨床現場で活躍しており、日本でも将来的に1000人程度が必要とみられている。このため、養成が急ピッチで進められているわけだが、一方で資格を取っても専門職として働く場が確保されていない実情がある。

遺伝子診療部を置く大学病院は全国に約60あるが、このうち遺伝カウンセラーを正規職員として置いているところは、千代教授によれば「ない」。非常勤が若干あるが、この場合も遺伝カウンセラーとしてではなく事務職員としての採用という。収入はアルバイトと変わらないといい、家族を養うことは難しい。

「カウンセリングは、治療技術を提供する医師とは別の立場で行うのが望ましい。しかし、日本では臨床遺伝専門医がカウンセリングも行っているのが現状」と千代教授。

今の日本の医療システムでは、専属の職員を雇用するよりも、医師に遺伝カウンセリングを担当させた方が病院として安上がりという事情もある。しかし、医療経済的な側面や、医師不足の中で医師の専門性を生かすためにも、医師以外の専門職の活用は不可欠だ。

千代教授は「遺伝医療が進展する中で、遺伝カウンセリングの重要性は増している。患者の人権や利益を守るためにも、遺伝カウンセラーをもっと活用してほしい」と話している。

(出典:産経新聞)



◆未来のカルテ 遺伝子診断は今 情報の管理

■家族にも波及、保護どう確保

遺伝子情報には、患者だけでなく、患者の家族ら血縁者の情報も含まれる。それだけに、病気が分かったとき、遺伝子診断を行うべきか、結果を家族にどう伝えるか、患者は新たな悩みを抱えることにもなる。

大阪府泉大津市の私立高教諭、土井悟(さとる)さん(59)は、親から子へ50%の確率で遺伝する「家族性大腸ポリポーシス」の患者会代表を務める。この病気は、大腸がポリープだらけになり、気づかないで放置するとポリープの一部ががん化し、死に至ることもある。土井さんの母親とその姉妹4人は、いずれもこの病気で50歳前後でがんになり、死亡している。遺伝すれば100%この病気を発症するが、初期のポリープが見つかったときに大腸を切除すれば、がんになるのを防ぐことができる。

土井さんの母親にこの病気があることが分かった約30年前には、土井さんら子供が遺伝しているかどうかを知る方法がなかった。今は、親がこの病気と分かったときに、親と子の遺伝子を調べれば遺伝の有無が分かる。

土井さんの病気が分かったとき、長男の洸昌(こうすけ)さん(24)は小学生。このときはまだ遺伝子検査はなかったが、できるようになった中学3年のとき、洸昌さんは検査を受けた。結果は陰性で遺伝していなかった。

「この病気の場合、遺伝子診断をすることで病気が原因のがんを予防することにもつながる。遺伝していてもいなくても、診断することによるメリットは大きい」と土井さん。

一方、治療法のない病気の場合、遺伝子診断を受けるかどうかは今も悩ましい問題だ。また、治療法がある病気でも、遺伝子診断の結果が生命保険の加入拒否や、雇用や婚姻で差別を引き起こす恐れも指摘されている。

ユネスコは2003年に「ヒト遺伝情報に関する世界宣言」で、「遺伝情報は特別な地位をもつ」として、「適切な水準での保護を確立すべきだ」とうたっている。日本のガイドラインもこれに準拠するよう示されている。ただ、日本では遺伝子と保険についての法的ガイドラインがないほか、染色体情報や遺伝子情報を扱う基準が十分ではなく、病院任せ、医師任せになっているのが現状だ。

東京女子医大付属遺伝子医療センターの斎藤加代子所長は「遺伝子情報は『知らないでいる権利』も含めて、すべての人にかかわってくること。プライバシー権尊重への対応をどうするかなど広く議論していくことが必要」と話している。

(出典:産経新聞)

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